薄い血

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家族といっても様々な形態がある中で、この現在で、私にとっての家族はやはり血のつながった実家の両親と弟の三名という印象が強い(弟は東京だが)。夫は、私が「自分の力で得た家族」であって、血はつながっていない。もちろん、夫のことも大事な家族だと思っている。だが「哀愁のチバラキ」の三名とは、どこか違うのだ。


私が、自分のメンタルの治療も途中で、経済的にも自立できておらず、夫も勤め始めて長くない状況で、それでも結婚したいと思ったのは、夫が酷い風邪を引いて十日間寝込んだことがきっかけだ。

もともと私たちは、結婚を前提に同棲を始めた。予定では、私もある程度の稼ぎを得て、精神的にも経済的にも互いの両親から「自立」できてからだと考えていた。

そんな中、夫が倒れた。
体温計は40度を指し、辛そうに汗をかいてうなっている。私は病人の看病などしたことがなかったので、クックパッドでおかゆの作り方を調べて作り、スポーツドリンクをヒーヒー言いながら何本も買ってきて、病院に同行し、ただひたすらに彼が楽になることだけを祈った。

その時に、思ったのだ。
彼にもしものことがあった時、実の家族である義母には連絡が行くだろうが、書類上何の関係もない私に一報が届くだろうか?
その逆も然り。私に何かあった際、「哀愁のチバラキ」には知らせがいっても、彼が不在だったりしたらどうなるのだろう?

「この人と『他人』でいるのは、もういやだ」

そう思って、彼と相談し、半年後に入籍した。


話を戻すと、上に彼が倒れた時「クックパッドでおかゆの作り方を調べて作った」と書いた。寒いと言うのでダブルの毛布を自力で買いに行ったりもした。苦手なフルーツも、彼が食べたいと言うので買ってきて食べさせた。

彼が回復した後、実母にそれを報告すると、とんでもない爆弾を投下された。
私は料理が不得手である。実家を出るまで包丁すらまともに握ったことがなかった。彼との同性&結婚生活で、徐々に慣れてきてはいるが。

母は、私が「必死こいて」やったつもりの看病に、ダメ出ししてきたのだ。

「おかゆはちゃんと鶏肉からダシを取ったの?」
「同じ味のものばかり食べさせたんじゃないでしょうね」
「高熱の時はおでこより脇を冷やさないと意味がないわよ」
(以下略)

治ってから言われても困るのだが、結局私がどうしたかというと、泣きながら夫に謝った。夫も困っていた。
ちなみに母は、

「次から気をつければいいじゃない」

と笑顔(推定)で言った。何の励ましにもなりゃしねー。


私と弟はとても仲がよかった。実家時代は一緒にゲームをしながら何時間もしゃべった。真面目な話も、ネットのネタ動画の共有も、何でも話した。
奴は今、東京の、ウチから遠い方に住んでいる。一度遊びに来たこともあるし、夫とはオタク同士仲良くやっているようだ。

弟も、ちょっとした障害持ちだ。就職には本当に苦労した。
私はその話を母から聞いていた。でも、すでに家を出ていた私は、それが、あんなに大好きだった弟のことなのに、どこか遠く感じられて、今はアイツより、夫が大事だなぁ、とぼんやり考えていた。


血の縁は、確かに切っても切れないのかもしれない。
でも、つながりながらも、薄くなるのかもしれない。
それは生活が作用する問題かもしれないし、共に過ごす時間が要因かもしれない。

「血縁」というものは他にないコネクションだ。
しかしそれを絶対視するのではなく、薄くつながる程度で、適切な距離を保ちたい。